XGS-PON とは?
XGS-PON はパッシブ光ネットワーク (PON) 用の最新規格で、10Gbps の高速対称データ転送をサポートでき、ギガビット対応 PON または G-PON として知られている規格ファミリーの一部です。G-PON はギガビット PON または 1 ギガビット PON の略語です。XGS の「X」は数字の 10 を表し、文字「S」は対称の略で、XGS-PON = 10 ギガビット対称 PON です。初期の非対称 10 ギガビット PON バージョン (XG-PON) は、上り回線方向速度 2.5Gbp に制限されていました。
1990 年代に登場した PON 技術は、技術の進化に伴い、異なる波長、速度、斬新なコンポーネントを用いて複数のイテレーションを経て開発され続けました。すべての光ファイバー PON ネットワークの共通点は、ファイバーおよびその分割/統合コンポーネントの非通電状態つまりパッシブ状態です。電力を必要とする光増幅器などのアクティブ要素はネットワーク上にありません。ストリーミング、高解像度、5G、およびその他の新技術により帯域幅の需要が高まり続ける中で、XGS-PON その他の規格が不可欠となって来ました。
同一ファイバー経由での上り回線と下り回線の同時伝送は、波長分割多重 (WDM) により実現しました。この技術は、一つの XGS-PON 波長または光の色の伝送を上り回線に、もう一つを下り回線に割り当てることができます。
標準化された PON の展開と運用は、G-PON ファミリー用の国際電気通信連合 (ITU) 規格、およびイーサネット PON(EPON) 用の米国電気電子学会 (IEEE) 規格を通しての初期採用以降に確立されてきました。新しい XGS-PON 規格は 2016 年にリリースされ、ITU-T G.9807.1 勧告として指定されました。
新規格の範囲では、XGS-PON は住宅、ビジネス、モバイルバックホール、その他のアプリケーション用の 10 ギガビット対応の対称パッシブ光アクセスネットワークとして定義されます。G-PON のこの対称 10Gbps の進化の包括的な規格を策定するために。初期の XGS-PON 物理層規格の要素が使用されましたが、これは同じ光トランシーバーコンポーネントを XG と XGS-PON に使用できることを意味します。NG-PON2 規格 ITU-T G.989.3 には、プロトコル層規格も使用されています。
XGS-PON 技術の物理ファイバーおよびデータ型式規則は、元の G-PON 規格から変更されていませんが、波長はシフトされています。XGS-PON は 1577nm の下り回線波長および 1270nm の上り回線波長で稼働します。この主な理由は、複数 PON サービスが同一 PON 上に共存できるようにし、シームレスにサービスアップグレード/移行できるようにする、または異なるサービスプロバイダーが同一 PON を使用できるようにする、あるいは異なるレベルのサービス (ビジネスと住宅など) を提供できるようにするためです。全体的な PON 伝送ウィンドウ 1260~1650nm は、同一ファイバーネットワーク上で同時に G-PON、XGS-PON、NG-PON2 規格に対応できますが、XGS-PON の波長は、G-PON や NG-PON2 など、他の規格のものとは異なります。XGS-PON は、対称性を提供するための XG-PON 規格の更新であったため、XG-PON と XGS-PON は同じ上り回線および下り回線の波長で稼働しますが、これは同一波長の再使用があった場合のみです。今日では、10G サービスの展開を検討している大部分の通信事業者は XGS-PON を選択します。
PON ネットワークの進化により、PON テストツールの改善と適応性が必要となりました。OTDR、光源、ブロードバンドパワーメーターを含む従来方式のファイバーテストツールは効果的に使用できますが、制限がある可能性があります。たとえば、ブロードバンドパワーメーターは、複数波長の光がある場合には下り回線の光パワーレベルの測定に使用できません。これは RF ビデオが同一 PON にオーバーレイ (ブロードキャスト) されるため、あるいは同一 PON 上に複数の PON サービス (G-PON と XGS-PON など) が共存するためです。下り回線波長は連続的にブロードキャストされるため、測定は容易ですが、PON の上り回線の物理パスは共有されるためバースト上り回線トラフィックとなる上り回線波長伝送には時分割多重化 (TDM) アプローチを取る必要があります。また、加入者宅内の ONT 装置は、最初に下り回線波長を受信しないと上り回線に応答、伝送できないため、上り回線パワーの測定にはバーストモード測定とスルーモードでの運用に対応するツールも必要となります。
専用 PON パワーメーターは、上り回線と下り回線の起動パワーが仕様を満たすか、光挿入損失がシステムのリミットを超えるか、および規格に基づいて許容できるかを判定するための便利な多機能ツールです。異なる伝送波長の使用が XGS-PON 技術の主要素であるため、測定する波長をフィルターして選択できる機器が必要です。VIAVI PON パワーメーターは、波長を測定すると同時に、波長選択型パワー測定を提供することにより、および型式によってはライブネットワークのサービスアクティベーションまたはトラブルシューティングに適したスルーモード機能を提供することにより PON テストの困難に対処します。
SmartPocket V2 OLP-39 TruePON テスター
TruePON テスターは、TruePON PON-ID 解析で強化された波長選択型パッシブ光ネットワーク (PON) パワーメーターです。波長選択性により、個々の下り回線波長が正確に測定され、ボーダーラインぎりぎりの導入を防ぐことができます。サービスのアップグレードまたは移行計画の一環として、共存モデルで同じ PON に複数のサービスが存在する場合、個々の PON 波長を同時に測定する機能が絶対に必要となります。TruePON PON-ID 解析は、G-PON および XGS-PON サービスの OLT ポートのシリアル番号、ODN クラス、および OLT 下り回線送信パワーを提供します。OLT シリアル番号により、作業者は、お客様のサービスがプロビジョニングされた正しいドロップポートを確認または見つけることができ、サービスを別の OLT ポートに再プロビジョニングするための時間の浪費を防ぐことができます。OLT 送信パワーを読み取ると、インサービスの損失測定が可能になり、境界でのインストールを回避したり、既存のインストールのトラブルシューティングを行って低パワーレベルの原因を特定したりできます。SmartPocket V2 OLP-39 TruePON テスターは、G-PON および XGS-PON サービスのテスト、導入、およびトラブルシューティングのための使いやすく、コストが最適化された専用のソリューションであり、耐久性が高くコンパクトなフォームファクターはフィールドでの使用に最適です。
SmartClass ファイバー OLP-87 PON パワーメーター
PON ネットワーク経由での対称的伝送により、下り回線と上り回線の統合テストは PON アクティベーション、トラブルシューティング、メンテナンスの効果的な戦略となります。SmartClass Fiber OLP-87 PON パワーメーターは、XGS-PON、10G EPON、NG-PON2 を含む G/E/G-PON サービスの上り回線と下り回線の同時テスト用に設計されています。この機器は、高度で多機能な波長選択式パワーメーターおよびスルーモード機能 (上り回線バーストモードのサポートを含む) を備えており、複数の上りおよび下り回線波長を同時に測定します。また統合端面検査機能によるスピーディで簡単なファイバー端面検査と認証が可能で、信頼性の高いレポートをオンデマンドリコール用に便利に保存できます。
XGS-PON と NG-PON2 の比較
NG-PON2 規格は、サービスとネットワーク機能を向上させるための論理的な次のステップだとも言われますが、機能向上に伴う新しい課題も出現します。NG-PON2 は、時分割および波長分割多重通信 (TWDM) を使用することで、同一ファイバー上で同時に 4 つ以上の 10Gbps の伝送により合計 40Gbps の対称容量の伝送を可能にします。この技術は、先駆けの G-PON の繰り返しと同様、上り回線および下り回線専用波長で運用される XGS-PON とは著しく異なります。NG-PON2 の帯域幅の可能性は注目に値しますが、この技術の躍進は回線の両端に複数の固定またはチューナブルオプティクスを必要とするため、それを必要としない XGS-PON のサービス展開に比べて、初期コストが高くなります。
TWDM の使用により、NG-PON2 用の可変波長機能が実現され、NG-PON2 規格に準拠して割り当てられた上り回線と下り回線波長レンジは XGS-PON や G-PON の専用波長とは重複しません。この違いにより、NG-PON2 サービスを既存の G-PON や XGS-PON にオーバーレイできます。NG-PON2 と XGS-PON は共により高い/より長い (>1550nm) 下り回線波長を使用するため、ファイバーマイクロベンド減衰によるパワー損失の影響を受けやすくなっています。
XGS-PON OLT
XGS-PON を含むすべての PON 規格での開始点は、サービスプロバイダーの局側に設置される光回線終端装置 (OLT) です。OLT は、サービスプロバイダーからのデータを変換して伝送するアクティブ (通電) ハードウェアで、光加入者線ネットワーク装置 (ONT) 側の多重化を調整します。パッシブ下り回線の光スプリッターのため、XGS-PON OLT は同一データをネットワーク上のすべての ONT にブロードキャストします。各 ONT で、どのデータが自回線のものかを決定します。仮想化された OLT は、柔軟性のために同じハードウェアを加えて、XGS-PON や NG-PON2 等、複数 PON テクノロジーにトラフィックを届けるようにプログラムできます。OLT 分割比の柔軟性により、1 つの XGS-PON OLT で複数の PON 光分配ネットワーク (ODN) を運用できます。
XGS-PON SFP
Small Form-factor Pluggable (SFP) は、ネットワークスイッチの SFP ポートに接続されたホットスワップ可能なトランシーバーで、電気信号を選択した波長の光信号に変換し、光信号を電気信号に変換します。XGS-PON 伝送をしやすくするために使用する SFP は、10Gbps の速度をサポートし、内部の WDM カプラーを通して上り回線の送信と下り回線の受信を同時にサポートする設計でなければなりません。小型フォームファクターにかかわらず、XGS-PON SFP は高度な電子技術を使用して、上り回線送信中の出力パワーを安定化します。
XGS-PON ONT
シングルまたはカスケードされた光スプリッターの使用を通して、OLT 下り回線波長を分割し、サービスを最大 128 までの終端装置 (ONT) にサービスを提供します。同等の E-PON および 10G-EPON 規格を策定した IEEE は ONT を Optical Network Unit (ONU) と呼びます。
最近のパッケージング、光学製品、およびチップデザインの革新により、10G ONT のコストが 1G ONT/ONU のコスト近くまで大幅に削減されました。XGS-PON 展開が加速されるにつれて、今後も規模の経済により効率が改善され続けるはずです。新しい世代の XGS-PON ONT にはより多くの柔軟性が組み込まれるようになり、FTTH、ビジネスおよび 5G アプリケーションはより多くの共通ハードウェア要素を共有できるようになりました。
XGS-PON はその対称 10Gbps 速度と互換性アーキテクチャにより、今後数年における高速データ、音声およびインターネット要件に対する実現可能なオプションになりました。ビデオ会議、ゲーミング、クラウドストレージといったサービスはより頻繁に使用されるようになってきており、上り回線配信速度に対する需要も同様に高まりつつあります。
5G フロント/ミッドホールなどのその他のアプリケーションも、対称 XGS-PON の性能と効率のメリットを享受できます。XGS-PON はパッシブアーキテクチャに変更を加えることなく G-PON と同一ファイバープラントに共存でき、高い分割比が可能であるため、論理的かつコスト効率の良い拡張オプションとなります。NG-PON2 のサービス展開は、より厳格な光音質および調整可能なトランシーバー要件が満たされることを前提に、速度と帯域幅のレベルを更に引き上げることができます。
簡潔性と下位互換性を基盤にした PON の価値は、20 年以上にわたって実証されてきています。XGS-PON は今後もこの伝統を大切に守りながら、前例のない全く新しい領域にも挑戦を続けていきます。